電力問題を「風化」させてはならない

今年の夏も暑いですね。今年は冷夏だとか年の初めころに聞いた気がしますが、日中は冷房が欠かせない程度には、夏らしい暑さになっているなぁと感じます。

冷房といえば、電気予報、最近見なくなりましたね。

震災直後の、原発が停止したころは「電力は足りるのか?!」と国民全員がやきもきしていて、特に夏場はどれくらい電力に余裕があるのか、非常に注視していたように思います。節電は一時ブームに近い盛り上がりを見せ、暑い夏場でも国民は文字通り汗水流して節電に取り組みました。そうした努力が実り、幾度か夏を乗り越えることができた結果、「なんだ、原発がなくたってなんとかなるじゃないか」と自信を得たからか、電力問題は「解決済み」という認識がなんとなく国民に広まって、それで電気予報の需要がなくなりつつあるのかもしれません。

しかしながら、このまま電力問題を「風化」させてしまって、はたして大丈夫なのでしょうか。

昨年夏のピーク時、関西電力の電力予備率は3%にまで追い込まれました。しかも、これは他社から融通してもらってなんとか維持できた数値です。もしこのとき、どこかの火力発電所が故障していれば、関西圏は大規模な停電に見舞われていたかもしれません(火力発電所はどこも老朽化が進んでいますから、現実化するおそれはかなり高かったのではないでしょうか)。今年の夏も電力の供給量はさして変わっていない、むしろ昨年は動いていた大飯原発が停止しているため、昨年並みの猛暑が襲った場合、より危険な状況に陥ることになりかねません。

ときに、電気料金がそれほど上がっていないことも、国民の間に「電力問題はクリアした」感が漂っている理由のひとつかと思いますが、こちらもそろそろ怪しい。今まで電気料金の値上げが抑えられていたのは、電力各社が「原発の再稼働」を見込んだ上で料金設定をしていた(正確には、経産省が値上げ幅を抑えていた)ためで、つまりはとらぬ狸の皮算用、将来的に上がるはずの利益を現在に転嫁していたわけですね。それなのに、原発を動かせないとなれば、そりゃあ値上げしないとやってられない。原油・LNG価格の高騰も相まって、電力各社はどこも経常赤字、もはやどうにもならぬということで、今年に入って経産省に電力値上げの申請を相次いで行っているところ。

○北海道電力、再値上げ10%台後半 11月実施目指す
http://www.asahi.com/articles/ASG7X662VG7XULFA02F.html

要するに、電力問題は「風化」していいどころの話ではなく、むしろこれからが本番なのだと考えるべきです。残念ながら、原発を停止していた期間があまりにも長過ぎたため、いますぐ再稼働したところで、電気料金の値上げは避けられないでしょう。電気は、私たちにとってなくてはならないもので、値上げは国民生活に直撃します。産業界、特に電気を大量に使用しなくてはならない鉄鋼業の衰退はすでに現実味を帯びています。われわれ庶民、特に貧困世帯の生活に与えるダメージは、ともすれば消費税率上昇より重くなるかもしれません。まずはこれらの現実を避けられない運命として受け止めた上で、ではこれからどうすべきか、考えなければならないでしょう。



ところで、私個人は「いまある原発は再稼働させるが、新設はしない」がベターだと考えています。この点、反原発派の方とは相いれないのですが、しかし反原発派の方々はいまこそ、覚悟と信念をもってこう唱えてほしいと願います。

「原発を停止させることで、停電の危険や国民の生活水準の低下を招くかもしれない、否、日本の経済力は確実に減退するであろう。その結果、国民は原発を再稼働すれば避け得た不幸や苦しみを、あえて享受せねばならなくなるであろう。しかし、それでもなお、原発に頼らない生には代え難いのであり、原発停止に伴う不幸や苦しみは、日本国民が負わねばならない尊い犠牲なのである」と。

「別に原発なくたって何の問題もない」と考えるような方を、私は信用しません。原発停止に伴う犠牲をしっかりと認識し、それでもなお、その犠牲を人々に負わせることをも厭わない、そんな気高い倫理的態度を貫く覚悟があって初めて、反原発を唱える資格があるのだと思います。
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