8月30日デモに対する批評

今回のデモで非常に残念なことは、デモの主催者、若しくは参加者が「どの党を支持するのか」を明確にしなかったことです。

自民党は次の総裁選で安倍現総裁の無投票当選をほぼ内定していますから、自民党政権が続く限り、安保法案の撤回はまずありえません。また、先の総選挙で、自民党は安保法案の成立をマニフェストに掲げて勝利していますから、いくらデモで反対を叫んでも、自民党は「民意は我らにあり」と自負して一歩も譲らないでしょう。現に、安倍内閣の支持率は当初よりも下がったとはいえ、自民党の支持率は3割強と他の政党とくらべて群を抜いて高く、有権者の3000万人超が支持しているということですから、100万人程度のデモでは歯が立ちません。

つまり、本気で安保法案を止めたいならば、自民党を選挙で下し、当法案に反対する政党による政権を樹立させなければならないのです。

故に、デモは「戦争法案反対」と同時に「○○党を次の政権に」と主張すべきでした。なお、当法案に反対する野党の党首がこのデモに姿を現したようですが、彼らはデモの主催者に請われて参加したのでしょうか。もし、あたかもデモの参加者が自分たちを支持しているかのように見せるため流れに便乗しただけであれば、政治家としての品位を疑うべきでしょう。

また、デモ参加者のなかには「概ね自民党を支持するが、当法案だけは反対だ」という方もいたかもしれませんが、それはそれで自分の立場を明確に示すべきでした。野党支持者が反対するのは当然ですが、自党を支持している有権者が反対しているとなれば、自民党にとっては死活問題になりますから、そのメッセージをより深刻に受け止めたことでしょう。

総じて言えば、今回のデモはただ「反対」と言いたいだけで、どうやって安保法案を止めるのか、その具体的な戦略がまったく示されておらず、自民党政権に対して何らダメージを与えられないばかりか、多少なりとも有識を備えた有権者からは、その軽薄な行動を疎んじられるだけとなりましょう。

日本がかの戦争に突入した大きな要因のひとつに、「破邪顕正」という、邪さえ破れば自ずと正しい状態が顕れるという、ひどく無責任な精神性が政府や国民に巣食っていたことが挙げられると私は考えています。具体的な戦略目標がないため、何のための戦争なのかがまったく定まっておらず、ただただ戦線を拡大し、各地に戦災を振りまき、そして自壊していきました。

皮肉なことに、この「国民病」は平和を唱える人々の間に根深く残ってしまいました。幸いにも、ほとんどの国民は「破邪顕正」の精神には拒絶反応を示しており、少なくとも、あの大戦時のような暴挙を再び許すことは(今のところ)ないでしょう。また、戦後にリベラル左派の知識人が欧米を称賛してきた成果か、国民は「平和を叫べば平和になる」という精神論よりも「正義と秩序は人間の不断のケアなくしては維持できない」という欧米的な平和思想の方に親近感を覚えているようです。

反対派は、今回のデモに「手応たえ」を感じているようですが、廃案を本気に実現させたいのであれば、みんなで団結できたことに満足するだけでなく、デモの参加者を組織化して反対政党の下に組み込み、次の選挙で自民党を打倒すべく動員体制を整えるとともに、賛成派からの批判に反論できるだけの理論を構築して世の人々の信頼を得なければ、その前途は暗いと言わざるをえないでしょう。

※8月30日付の日本経済新聞の記事において、当新聞社とテレビ東京の世論調査の結果、内閣支持率は46%に持ち直したとのことです。おそらく、積極的な支持ではなく、反対派に与したくないだけの、いわば「オウンゴール」の結果であるように思います。今回のデモが以降の支持率にどう影響するのか、経過を注視する必要があるでしょう。

内閣支持率46%に回復、70年談話「評価」42% 本社世論調査
不支持40%
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H25_Q5A830C1MM8000/
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