28年産福島米は「復興」できるか

東北地方の28年産米の概算金(各農協が農家から買い取る価格)が発表されました。

『河北新報』<コメ概算金>東北、需給改善し上昇
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201609/20160918_73009.html

一昨年、昨年は危機的な米価安でしたが、今年は全国的に改善の兆しを見せており、東北地方もほとんどが1万円/俵(60kg)を上回るまで引き上げられました。なかでも注目されるのが、福島県の中通り・浜通り地方の米価復調です。

福島県でも、米所であり、風評被害が比較的少なかった会津地方は、震災後も堅調な米価を維持していましたが、浜・中は原発事故の影響を受けて、コシヒカリでさえ1万円/俵を切るという惨状でした(いくら米価が下がったと言っても、コシヒカリで1万円/俵を切った例は本県以外にありません)。

原発事故以後、県は安全・安心であることを確認するため、いわゆる米の全量全袋検査(県内で生産された米を、自家消費も含めてすべて検査装置にかけてベクレル数を測定する取り組み。検査結果は以下のHPに公表されています)を実施したり、放射性セシウムの吸収を抑制するためにカリウム資材の追加施肥を支援したりしています。

「ふくしまの恵み安全対策協議会HP」
https://fukumegu.org/ok/contents/

これらの取り組みの成果もあり、27年産米で国の基準値である100ベクレル/kgを超過した米はひとつもありませんでした。仮に超過したものがあっても、本検査によって除かれますから、基準値越えの米が流通することはありません。

……と、県はずっとアピールしてきたのですが、風評とは根深いもので、福島県産と銘打った米はなかなか売れませんでした。正確に言うと、卸業者も販売業者も、売れ残りを恐れて買わなかったのです。今でも、県外のスーパーに行くと、福島米はほとんど見当たらず、あったとしても激安商品としてしか売られていない、そんな惨状を目にします。

しかし、福島米は、県民の贔屓目と思われるかもしれませんけれど、品質がとても良いのです。その良品質の米が、福島で採れた米だから、ただそれだけの理由で売れずに格安の値段がついている。そこに目を付けたのが、中食・外食の企業でした。中食とは、お弁当ですとか、お惣菜ですとか、そういう調理品を製造・販売することですが、そこで使われる食材の産地はふつう記載されませんし、買う側も気にしません。外食でも、こだわりを売りにする店は食材の産地を看板に掲げたりしますけれど、特にチェーン店なんかは、ほとんど表示しません。

「福島県産」と明記してしまうと、一般客の食指は伸びない。けれど、福島県産と言わなければ誰も気にしない。であればと、産地を記載する必要のない業界は、格安でしかも美味しい福島米に食いついたのです。

もちろん、倉庫で腐らせることに比べれば、安くとも売れた方が良いのですが、問題は、この流通形態が固定化することでした。福島米が中食・外食業界に重宝されたのは、風評被害により「格安かつ高品質」の米となっていたからでした。安値でしか売れない苦しい状況があるにせよ、これに甘んじていては、福島米はひっそりと隠れるように消費される、いわば「日陰者」であり続けることになる。福島米に、他県産と肩を並べて、その品質に見合った評価がされるまで、福島の農業が真の意味で復興することはないのです。

そして、浜・中の米が、ようやく1万円/俵台に乗った。福島の農業の復興が、前に進む兆しが現れたのです。ただし、まだまだ油断はなりません。この金額はあくまで概算金。しかも、その引き上げは「福島第1原発事故に伴う米価下落への賠償金が年内で打ち切られる」かもしれないから、つまり生産者の生活に配慮する意味合いも込めた価格設定なのです(逆説的に言うと、浜・中の米はこの賠償金があるから低く抑えられていた、という側面もあります)。

価格の上がった28年産の福島米が、これからどのように売られ、消費されるのか、これはフタを開けてみないとわかりません。もしかすると、安いという理由で福島米を扱ってきた中食・外食業界が福島米から手を引き、結局売れずに在庫の山、果ては二束三文で買い叩かれ、次年産は賠償金がなくなった上に大下落……なんてシナリオも想定できます。そうなれば、福島の米農業は文字通り壊滅するでしょう。

価格が他県産並みとなった以上、もはや福島米は、己の出自を堂々と名乗って売って出なければなりません。震災から5年、風評を吹き飛ばし、消費者に選んでもらえる米となったのか。福島の農業が、ひとつの山場を迎えようとしています。
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