ガラパゴスな日本のお米――瑞穂の国は守れるか

私が住んでいるアパート近くの田んぼでは、先週末に稲刈りが終わりました。たわわに実った稲穂が収穫される様子をながめていて、他の作物のそれとは一味ちがう、格別の歓びを感じるのは、やはり日本人だからでしょうか。

さて、季節は収穫の秋をいよいよ迎えようとしているわけですが、ときに、日本のお米は「どれくらい実るのか」ご存知でしょうか。

日本でお米の作柄を量る際は、基本的に1反(10a)単位の収穫量で判断しますけれど、それでは1反あたりの収穫量、だいたいどれくらいだと思いますか?

もちろん、その年その年ごとに開きは大きいですし、地域によっても異なりますけれど、全体でみれば1反あたりおよそ9俵、1俵は60kgですので、約540kg/10a、これが日本米の平準的な収穫量だと言われています。

しかし、これだけではすごいのかすごくないのか、良くわかりませんね。それでは、世界の米農業と比較してみましょう。

国や関連団体の資料だと、国ごとの「総収穫量」はいろんなところで公表されていて、ランキングも作られているのですが、国ごとに国土面積は異なるのですから、単純な総収穫量では比較できません。ですから、単位あたりの収穫量で見なければならないのですけど、不思議なことに、単位あたり収穫量で比較している資料もHPもほとんど見当たらない。そのため、少し古い記事になりますが、こちらを参照いたします。

○世界各国と日本の農産物単位面積当たりの収穫量の比較
http://www.foodwatch.jp/primary_inds/whatisgood/31918

こちらのとおり、他国では700kg/10a越えも珍しくありません。瑞穂の国日本で作られる米の実りは、実はそれほど「豊か」ではないのです。

TPPで日本の米農家や農業団体が戦々恐々としている理由のひとつが、この収穫量の差です。もし海外の米が自由に日本の米市場へ参入するようになったら、価格競争でまず勝てない。目下警戒されているのは、アメリカのカリフォルニア米ですが、こちらのグラフだと800kg/10a手前ですけれど、私が読んだ最近のレポでは、1,200kg/10aの農場もある、との報告もありました。

※余談ですが、『USAライス連合会』の対日本向けHPはやたらと充実していて、日本市場に食い込んでやろうという意気込みをびしびし感じます。
http://www.usarice-jp.com/

世界では、米の栽培技術は革新を重ね、収穫量はどんどん増加していく傾向にあり、それに伴い生産性もぐんぐん上昇、当然、米価も安くなっていきます。一方の日本は、むしろ収穫量を抑える方向に進んでいる。というのも、国内の需要が年々減少していますから、たくさん収穫されると値崩れが起き、国内の米農業が崩壊するおそれを常に抱えているからです。そのため、日本では生産コストを抑制する技術を推すよりないのですが、大規模かつ大量に収穫する海外の米農業に対して、小手先程度の改良では、価格競争に勝てるはずもありません。

国内で余っているのなら、海外に輸出すればいいじゃない、と言うは易いが実際は難しい。確かに、日本米は収穫量が少ない分、質は抜群なのですが、世界の米食文化において、米は「調理に使う」のが主流です。日本のように、ただ炊いただけの米を食べる文化は圧倒的少数派なのです。そして、日本米は「ただ炊いて食べる」のに特化して改良されてきた経緯があるので、調理には不向き。結果、海外市場の需要に迎合できず、シェアはなかなか伸びません。

その突破口として期待されているのが「和食」です。無形文化遺産に登録された勢いを駆って、海外に猛烈なアプローチを仕掛けているところですが、この和食と一緒に「ただ炊いて食べる」米食文化も広まれば、海外の日本米市場を開拓できる、とまあそんなことも目論んではいるのですが、国内の余剰米がはけるほどの規模にはなっていませんし、それに、やはり日本米は「高級品」過ぎて、それならカリフォルニアのジャポニカ品種で代用しよう、という流れに抗しきれないでいます。

日本米は「低収穫・高品質・高価格」なのに「供給過多」と、市場の原理に照らせば非常に矛盾した、「非常識な」産業構造を抱えており、さらに「高収穫・中品質・低価格」を志向する世界の米農業のメインストリームからも取り残された、いわばガラパゴス的状況のなかにあります。国内外からの強烈な「米価安」圧力に抗するため、国はあの手この手で米農業を保護していますが、そのために多額の予算が投入されています。また、輸入米には700%を超える関税がかかっているのですが、もしこれがなければ、消費者はもっと安価なお米が食べられるはずで、現状の日本の消費者は、選択の余地なく割高な米を買わされている、と言えるのです。

稲穂が波打つ景色は、日本人の原風景ではありますが、その美しさは、非常に際どいところで何とか保たれているのです。今後の、日本の米産業をどう発展させていくのか――国と国民の財布を苦しめながら維持するか、背水の陣を敷いて海外市場に活路を見出すか。これは米農家や米業界のみならず、国民全体で考え、決断しなければならない問題ではないかと、私は考えます。
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