北方領土はグレーゆえに活用しうること

北方領土で共同経済活動、平和条約へ「一歩」 (東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/150288

北方四島が「返還」されるかもしれない、という期待は、早々に棄てるべきでしょう。

それは、日本の外務省や安倍首相が無能だからでも、ロシアのプーチン大統領が「くせ者」だからでもありません。ただ、日本にとって返還にメリットは少なく、一方ロシアにとってはデメリットが多いからです。

北方四島の周辺海域は豊かな漁場であるとはいえ、仮に返還されて、日本人漁師が満足に漁ができるようになったとしても、生活と経済活動に必須のインフラ整備等に対する官民の投資額を回収できるほどの収益があるかは甚だ疑問です。

その事情はロシア側も同じですが、旧ロシア帝国時代から海洋への進出路の確保に奔走してきた国として、四島は軍事的・地政学的に重要な拠点となります。四島統治にかかる経常収支が赤字でも、政治的には十分にペイできるのです。

両国で四島の「価値」に大きな隔たりがある以上、よほどの好条件がなければ、ロシアが四島を明け渡すことなどありえません。

ここで、北方四島は日本固有の領土であるにも関わらず、かの大戦末期に、旧ソ連が中立条約を破り、また日本が事実上降伏を宣言していたにも関わらず、それを無視して「侵略」して奪い取ったのであり、けして許されるものではない、という主張もありましょう。

確かに、道義的には北方四島をロシアが「占拠」しているのはまことに不当である、と言えるでしょう。しかし、国家の領土に道義は通じません。たとえば、アメリカ合衆国はネイティブ・アメリカンの土地を収奪して成立した国家ですし、またわが国でも、北海道や沖縄を日本の領土に組み込んでから、まだ150年も経っておりません。

近代国家の領土は「既成事実」を積み重ねていくうちに、歴史的に形成されるものです。その既成事実化の最大の武器が「暴力」であり、ひとたび「暴力」によって囲い込まれた土地は、時間が経てば経つほど、その国家の領土として歴史化されていく。残念ながら、北方四島はかなりの程度ロシアの領土として「歴史化」されつつあり、これを取り戻す術は、日本の「暴力」でロシアの「暴力」を無理矢理に排除することしか、残されていないでしょう。

北方四島の返還は、非常に非現実的だし、うま味も少ない。であれば、北方四島の返還要求はあくまで駆け引きのカードとして保持しつつ、北方四島の「グレーゾーン」的な性格を利用し、国家間のボーダレスな経済交流の場として、思い切った実験の場とする方が双方にとって益になりましょう。たとえば、今話題のIRを北方四島に日ロ共同で整備して一大商業地区を築くだとか。

アイディアは様々あるでしょうから、北方四島はどちらのモノなのか延々問題にするよりも、その政治・歴史的背景を逆手に取って、災い転じて福となすような一手を共同で模索する方が将来のためになるのではないでしょうか。

※もしグレーゾーンのままの方が双方にとって得ならば、無理して平和条約を締結する必要もないと思います。
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