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わが国の憲政に照らせば、「もはや」生前退位は認めるべきではないこと

昨年の8月に、今上陛下が国民に向けて発せられたビデオメッセージを皮切りに、国政では生前退位に向けた議論と法制度の検討が進んでおりますけれど、私は「生前退位は認めず、国事行為は摂政で対応すべき」であると考えます。といいますのも、わが国の憲法を礎とする立憲政体の本分に照らせば、今上陛下の生前退位は「もはや」認め難いからであります。

大日本帝国憲法第4条においては「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ」とあり、特に「国体明徴声明」が出されて以降は天皇こそが国家の統治者であることが強調されましたが、日本国憲法においては、その第1章第1条において「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とされ、いわゆる「象徴天皇制」がここに基礎づけられるとともに、同章第4条では「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とされ、天皇の国政への参与は禁じられ、また国事行為にしても「内閣の助言と承認」なしには行えないこととなりました。

わが国は、戦中・戦前の国体から脱皮するために、天皇なる地位の存在理由を「統合の象徴」としてのみ認め、さらに天皇の政治介入を徹底して排除することで、立憲君主政体を謳う大日本帝国憲法から決別して、真に民主的な政体を構築したのでした。

少々乱暴な言い方をすれば、わが国の憲政においては、今上陛下のご意思など「知ったことではない」のです。象徴として在ることこそが天皇の意義なのであり、象徴としての機能は、陛下がご存命であれば問題なく果たせます。今上陛下は、ご自身の高齢化により国事行為他、天皇としてのお務めを果たせないことにいたく心を痛めていらっしゃるようですが、第5条で「摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ」とあるように、国事行為は天皇でなければできないというわけではないのですから、摂政を置けばよろしいのです。

数歩譲って、生前退位を検討するにしても、ビデオメッセージが公表された今となっては、わが国憲政の体面上、非常に「微妙な」ところであります。というのも、これではまるで、今上陛下のご意思に従って法制度を改める、つまり今上陛下のご意思が国政を動かしているかのようであり、それはわが国の憲法に掲げた象徴天皇制の原則からすれば、絶対にあってはならないことだからです。

もちろん、今上陛下は天皇である以前に人間でありますから、ひとりの人間としてお望みを抱くのは当然であります。けれども、ビデオメッセージとしてご自身の意思を公にするのではなく、たとえば宮内庁の側近にそれとなく生前退位の意向を仄めかし、政府がそれを何とはなしに耳にして、あたかも今上陛下のご意思とは関係なしに、政府の独断で生前退位の是非やその方法を検討していく、そういうアプローチもあったはずです。

現在、国会では憲法第4条との整合性を図った上で退位できるようにするため、あれこれと審議しておりますが、国民はおろか、あれだけ「立憲主義」を唱えていた護憲派の人々ですら「天皇の意思に基づく法整備」について、憲法との兼ね合いをさほど大きな問題としていません。おそらく、このままなし崩しに生前退位に向けた調整が進むことでしょう。しかしこれが、陛下のお言葉が国政を動かしうることの証左となり、後々になってわが国の立憲政体を揺るがす事態にも発展しかねない。その火種を絶つためにも、今上陛下のお言葉を契機とした法整備には賛同しかねるのです。
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