米の「30年問題」――米農業の転換期へ

30歳前後の方であれば「2000年問題」のことはご記憶かと思います。西暦を下二桁でしか処理していないコンピューターが、2000年を1900年と取り違えて一斉に誤作動を起こすかもしれない、と騒がれました。

この「2000年問題」は、結局恐れていたような事態は何も起こらず、事なきを得ました。ときに、コンピューターよりもだいぶ「アナログ」ではありますが、私たちが普段食している「米」に、これから「30年問題」が待ち受けていることはご存知でしょうか。

「減反」という言葉は、小中学校の社会の教科書にも太字で載っていますから、みなさまご存知のことかと思います。日本で作っているお米は、食の欧米化・多様化により消費量が減って余り気味になっている、そこで、国では米以外の作物を水田に作付するよう推進してきました。その減反政策の柱であった米の「生産数量目標」の配分が、平成30年度に廃止されるのです。

これまで毎年度、国は米の国内在庫量と需要トレンドから判断して、米価を現状維持できる生産量と面積を算出するとともに、それを目標値として各都道府県に配分していました。これが「生産数量目標」で、きちんと目標どおりに米の生産量を抑えた農家には「米の直接支払交付金」という制度で10aあたり7,500円が「ボーナス」として支給されました。

これまで、米農家はこの「ボーナス」目当てに国が提示した目標に従っていましたが、この交付金も平成30年度から廃止されます。すると、米農家としては、もう米の作付を控える理由はなくなりますから、米農家が好きなだけ米を作るようになって、供給過多により米価の大暴落が起きるのでは、と懸念する声が業界内でたいへん強い。

しかし、生産数量目標の廃止は、産業としての「農業」に対する考え方を一新する好機と捉えるべきでしょう。これまでは、米農家は作れば作るだけ、すべて農協が買い取ってくれた。けれど、これからは農協も捌き切れない米は買い取らなくなる。米農家は「とりあえず作ればよい」から「需要を捉えて売れる米を作る」という発想に切り替えざるを得なくなります。その結果、経営者としてのマインドに欠ける昔ながらの農家は、利益を上げられなくなって、だんだんと生き残れなくなるでしょう。折しも、米農家の急速な高齢化で、担い手への農地集積が不可避的状況にありますから、新しい時代に適応できず、かつ後継ぎもいない農家が、担い手に農地を貸し出すよいきっかけにもなるかもしれません。いずれにせよ、国や農協が農家に「アメとムチ」をチラつかせて米の生産をコントロールする時代(その始まりは戦中まで遡る)が幕を降ろすということは、米農家の自主・自立性の回復とも取れますから、それが特段悪いことだとは私は思いません。

国内で最も生産量の多い農作物であるお米。そのあり方が平成30年度を境に劇的に変わります。それは米の産業構造はもちろん、農村・農家の形姿もまた変容を余儀なくされるでしょう。ではどう変わっていくのか……具体的にイメージするのは非常に困難ですが、それを占う時期は、もうすぐそこまで来ているのです。
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